大都会の愛し方

 

久しぶりに会ったらきっとお互い「お前超老けたね」って言い合ったりしちゃうんだろうな。大学の近くのモールの喫煙室で、講義終わりにチューハイ片手に馬鹿話に興じていたのが、もう随分昔に感じちゃう。
そんな感じで、本作第一編目を飾る「ジェヒ」は私に大学の友人を思い起こさせた。今となっては彼はもう結婚してしまって、すっかり疎遠になってしまったけれど。特に共通の趣味があるわけじゃないのに仲良く毎日つるんでたなんて、今考えると若かったからできたのかもしれない。だってそうでしょう?今も関係が続いている友人なんて、大体が映画や音楽、ファッションの趣味でつながっている人ばかりだ。
ジェヒと主人公の男の共通点といえば、どちらもぺらっぺらの貞操観念の持ち主だということくらいかもしれない。お互いいつも男の話をして、ゲラゲラと笑って過ごす。まるで学生時代の私達のように。そして二人とも、とんでもなく口が悪いのだ。語り口もいい意味で軽薄で、飾らない言葉が並んでいく。なんとなく日本よりも「オカタイ」印象がある韓国の作家の、こんな文章を読むのも斬新で、大嫌いな紙の本だったけれどすいすいと読めてしまった。
幸いなことに私の学生時代は男に関して言うなれば、ジェヒのようなドラマは起きなかったけれど(他の意味でのドラマ―それもとびっきりヘビーなやつはあった)、読み終えた時に訪れた寂寥感は、学生時代の親友の喪失に気付かされたからかな?あの頃の私も彼の好きだった女の子たちを、HDDのように記録していた。すぐに好きになって舞い上がっては振られて落ち込んで、超恋愛脳だった彼が今となっては一児の父だなんて信じられないくらい。そうやってジェヒも違う人生を歩んでいくんだろう。私も、主人公もすっかり取り残された側なんだ。